2019年11月22日 悪夢は続く
病棟での朝の看護師の回診は早い。概ね、7時前。いつも通りのバイタルチェック。血圧や脈拍、酸素量を人差し指で取られる。聞かれないことはあったが、大小の数も聞かれる。普通、入院中は運動量が減るので、便秘になりがちで、出たときに限って、一度も聞かれなかった。せっかくの成果を自慢したいのに…。
ホントに言葉は悪いが、夜行性おばさんのおかげで、大概その頃にはしっかり起きている。ある夜は、あまりにも何回もトイレコールに呼ばれるので、文句を言いつつ看護師は対応する。何度もナースコールするのでとうとうオムツをつけられていた。「次は、このままやってください」、「やだ」のやり取り。コールしても一向に看護師は現れないが、実は入り口近くで待機していた。「何できてくれないの?」「あ~、やだ」と、あまりにも独り言が続くので、外の看護師が舌打ちして、「うるさいなぁ!」と漏らす始末。
しばらくして、急に静かになった…。ついに、あきらめたのかオムツにやったのだろう、そのタイミングで全身紙(セロファン製かな?)エプロン姿の看護師が二人で入ってきて、(音で分かった)オムツ交換を始めた。
そのあと、ずっと文句たらたらだ。「なんでトイレに行ったらいけないの?」「なんで、連れてってくれないの?」たまに隣の患者のネプライザー対応で来る看護師に、「静かにしてください。まだ5時ですよ、夜中なので」と叱られる。「5時は夜中なの?なんで?朝じゃないの?」「あの看護師さん、5時を夜中っていうんだよ、おっかしいねぇ」「ほんとおかしいよ」、呆れて看護師は帰っていくが、独り言は朝まで続く。
とうとう、朝の主治医の回診の時に、看護師への不平不満をぶちまけた。「ここの看護師は、食事も出してくれないんですよ、おかしなことも言うし。どうしましょ」と言いつけていた。医師は回診の時にしか来ないのでやさしく接っするので、概ね患者はその指示を素直に聞く。
実は昨日、娘さんが夕食の時間に見舞いに見えて、コンビニで買ってきた、ご本人が好きだというお汁粉を半分くらい食べさせ、残りを冷蔵庫に入れた。それを知っている私は、嘘やんと思ったし、医師に尋ねられた看護師もあわててやってきて、「昨日、夕食時、娘さん来られて、たべてましたよね?あれ、お汁粉もあるじゃないですか?いつのものですか?」、矢継ぎ早に質問されていた。そういう時、脳の機能が衰えると答えられない。また、さっき起こったことや、自分でした事を思い出せなくなる。昨日開けたばかりのお汁粉なのに、「いつ買ったかわからないので捨てますね」。まだ、無言だ。明らかに脳が混乱している。私も時々そうなるから、よくわかる。
人を怒らせてしまう言動は、認知症や、高次脳機能障害によくあることだ。しかし、本人が一番困惑しているし、説明もできない、こうして、誤解や偏見が生まれる。
特にいつも患者にやさしく接する看護師が、その夜、ホントに精魂疲れ果てた様子で、「はぁ、疲れた」と声に出して言った。
私はその頃、真剣に認知症の疑いを、ご家族に耳打ちしようかと考えていた。でも、途中で部屋を移動したので、かなわなかった。下手したら、失礼に当たるからなぁ…。今考えたら、看護師でもよかったかな。
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| このコウジ中シリーズは私も読ませてもらったが、ほんとに役に立った。自分が障害持ちなので、どんな言動が家族にどんな影響や感情を与えるか。客観的に確認することができた。 |