約束された、障害者の記録

闘病<膀胱炎、眼球破裂、肺炎、虫垂炎、鬱、副鼻腔炎、脳梗塞、高次機能障害、緑内障、突発性難聴、鎖骨骨折、神経失調性失神、多発性肋骨骨折、腰椎圧迫骨折、外傷性気胸、骨粗鬆症、坐骨神経症、頚椎症>


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2019年11月30日 理学療法士との交流

毎朝、わざわざ私を選んで朝一に選んでるらしい。なぜだろう。9時に来て、リハビリ室に来れない相手をするには、「一緒に歩く」が、メイン。慣れてきたら、階段を一往復。


後でしっかり、リハビリ料として請求されるのはわかってるが、一人の他人を占拠できる貴重な時間だった。話し相手が欲しかったのだ。本当は、治療に対して必要でないことはわかってる。ただ廊下を歩くだけだからだ。
3歳位上の男性だから、ギリギリ話が合う。互いの仕事の話や、娘さんが留学したいらしいから、留学時代の事、国内外の旅行の事。音楽の話は一番、盛り上がった。ブリットロックが好きだったらしい。母が作ってくれた、マルチポーチに、ローリングストーンズのアップリケがついていた。「あ、オレの好きなストーンズじゃないですか?」。ビッグファンではないが、好んでよく聞いていた。母は、洋裁がセミプロ並なので、一そろい色色々な材料を安く仕入れている。その中の一つのアップリケだった。
ポーチはいつも持ち歩き、入院中はいつも机の上に出していた。中身は、血圧手帳、お薬手帳、もしも手帳、植込み型心電モニタ便利帳、健康保険限度額適用認定証、保険証、診察券、眼帯セット、予約票、ボールペン、それから護摩供養をされた切下げを入れている。お守りだ。


退院まで廊下散歩を付き合ってくれた。退院後も、親子でお世話になっている病院だし、しょっちゅう通てるから、何度か出合った。白い巨塔の列の中にいたり(ドラマみたいなこれ見よがしなことはなく、患者の邪魔にならないように縦に並んでいた)、リハビリの最中にも出くわした。向こうは仕事の最中なので、アイコンタクトで挨拶。


半年以上たった今では、もう、顔を思い出せないかもしれないだろう。宝塚俳優や芸人に似た、スタッフの方々は、マスク越しにでも判別できる自信はある。私は高次脳機能障害の一部、見当識障害、人の顔を認識できなくなってしまっている。さっき会った人の顔も認識できないのだ。脳梗塞で九死に一生を生き残った人は、「あの時死んどけば良かった」って言うらしい。私もそうだ。だって、痛みも何もなかったからだ。楽に死ねた。

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